教育費無料というもの
- 広報
- 2024年4月1日
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更新日:2024年5月9日
※本投稿につきましては、企業としての公式の体裁とは異なり、担当者個人の社内向け記事という形で投稿させていただいております。直情的な表現もあるかと存じますが、できる限り温かく見守っていただければ幸いです。※

最近、多くの企業様から教育費が無料かどうかというご質問をいただいています。現在日本で活躍している外国人材の多くが、日本で働くために自己負担でかなりの費用を支払っているからです。そのため、受入企業としては、教育費の徴収で負担が増えていないか心配されていることがうかがえます。
近年、人材業界で「教育費無料」が大きな話題となっています。これは日本の多くの外国人事業を取り扱う企業が主導して発信しているアプローチのキーワードだと考えられます。自社直結の人材確保を目的に、ベトナムで日本語学校を開校したり、自社ブランドの教材を制作し「無料教育」を謳っているのです。しかし、実際には乱立状態で、成功例は少ないのが実情です。ほとんどの場合、生徒獲得に失敗し経営が成り立たず、結局は名目だけの学校を残したまま活動を停止することが多いのです。
「教育を無償提供し、生徒の経済的負担を軽減すれば、応募者が増えるのでは?」と疑問に思われる方も多いでしょう。確かに、文字通りの意味で「教育費無料」を実現できれば、効果があるでしょう。しかし、実際には多くの組織が謳う「教育費無料」の背後に、人材側や送出機関へのコスト転嫁があるのが実態なのです。
例えば、自社ブランドのOJT教育プログラムを送出機関に提供しているものの、本来送出機関に支払うべき教育費を支払わず、自社以外の学生までその教育プログラムを受講させて、その見返りとして逆に教育プログラム費を請求するというケースがしばしばあります。また、求人案件との引き換えに現地にある自社ブランドの日本語学校に、送出機関の生徒紹介を要求しているケースがあります。法的には問題がないものの、送出機関としては、自社外の生徒の管理や税務申告などの負担増が発生するため、極めて困難な状況が生まれています。
ビジネスである以上、送出機関には人材募集ネットワーク構築から、日本語センター運営費用、そこに関わるスタッフの雇用全てに投資が必要です。一見するとベトナム側の送出機関の安値競争に責任があるように見えますが、根本的には送出機関と求人企業には明確な上下関係があり、送出機関はこれらの要求を拒める状況にはありません。さらに日本での事業収益を現地で還元できていないことが要因です。外国資本による「一方的な利益誘導」といった問題に対する無自覚が、事態をより悪化させており、極めて憂うべき事態だと考えられます。
「人材募集活動」に限って言えば、自社人材であってもとてもコストパフォーマンスの悪い事業であることは、日本にいる読者様ならすでにご存知のはずです。単発の紹介手数料や、継続的な派遣管理料なしには成り立たない商売なのです。
例示した企業たちは、形式的に負担額を支払っているだけで、実質的には入国諸費用以外の人材紹介料や教育費等を支払っておらず、むしろそれらを利益の源泉にしている企業もあるのが実情です。送出機関にとって、自社の人材にならない投資は、ベトナムでの回収が望めないため、コストパフォーマンスの悪い構造を支える形になり、そのツケは人材に回されることになるわけです。
結果として、みんな口をそろえて、もうベトナムでは人が集まらない、と言っています。
人材募集におけるコスト削減は本人たちの経済的負担を軽減できるため重要ですが、教育費用に関しては、むしろ惜しみない投資が不可欠で、その経費は受入企業が適切に負担するべきものです。加えて募集活動に際して、できるだけ中間手配人を通さず、人材自身の直接応募が得られる仕組みづくりが問題解決の鍵だと考えます。
「教育費無料」は現地教育に携わる先生方に対して、配慮に欠けていると言わざるを得ません。このような考え方とは正反対に、教育の重要性を十分に理解し、適正なコスト負担を求める姿勢こそが、当ホールディングス設立の精神的な原点であると心に留めたいと考えています。
日本国内のみならずベトナム側への還元を重視した取り組みこそが、外国人労働業界だけでなく、日本の産業全体の発展につながるはずだと信じています。
以上となります。
長い内容となりましたが、本稿をご覧いただいたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。
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