ベトナムの兵役と外国人材事業
- 広報
- 2024年3月15日
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更新日:2024年5月9日
東日本大震災を初め、自然災害発生時に最初に救助・救援にあたるのが自衛隊です。素晴らしい活動ぶりですが、一方で自衛隊は自国の防衛を担う存在でもあり、しばしば憲法9条改正の議論とリンクすることになります。自国の安全保障を永遠に米軍に依存する訳には行かないとする意見が根強いためです。それでも、もっと論じるべきことがあるでしょう。
あ、これ以上はいけませんね!
さて、冒頭から日本の自衛隊について触れましたが、ベトナムの国防はどうなっているでしょうか。
日本と大きく異なる点が徴兵制度です。日本では志願に基づく自衛隊であり、国民の兵役義務は法制化されていません。これに対しベトナムでは厳格な徴兵制が敷かれており、対照的な違いがあります。
ベトナムでは18-25歳の健康な男性に最大2年間の兵役が法的に義務付けられています。配属後は陸海空いずれかで実戦訓練に就くことになり、条件によっては30歳まで服務が延長されます。事実上、兵役を避けることは不可能で、拒否すれば重い罰則が科されるなど、個人の自由を制限する強制力のある政策が敷かれています。
これは国として、有事の際に老若男女や士農工商を問わず、全国民がある程度の戦闘能力を保持する必要があると判断してのことだと考えられます。正規軍の兵士とはなりませんが、継続的な徴兵制によって国全体の防衛力が維持され、全国民が予備軍の一角を担うことになるわけです。

兵役の入除隊が集中するのが毎年2月から3月です。この時期に合わせて多くの送出機関が人材獲得に躍起になりますが、旧正月と重なる2月は活動が制約されるため、本格始動は3月頃からです。
ベトナム人材営業では、受入企業に対しよく話のネタとして持ち掛けられるのは、軍とのコネクションがあることのアピールです。しかし国防上の観点から、民間企業と軍隊の接点は限定的で、実際に直接的な関係構築は容易ではありません。仮に採用時期をずらして指定しても、除隊したての人材が確保できるとは限りません。
こうした営業上のアプローチには一定の合理性があります。兵役経験者であれば厳しい訓練と集団生活を通じた人格形成を経ており、規律正しい性格や協調性といった付加価値を有する人材だからです。だからこそ多くの送出機関が、自社の強みとしてその点をアピールしているのです。
しかしながら、これはあくまでも鍛えられていない一般人材との比較に過ぎません。多くの送出機関の場合は、日本語教育以外に厳しめの時間管理、スローガンの声出し練習、来客時の丁重な出迎え訓練などに時間を割くものばかりだから、効果を考えると付加価値として軍隊経験者のアピールに走りがちです。
除隊したての人材に適切な訓練と教育を施せば、最大限に力を発揮できる可能性があります。同様に、一般人にも適切な教育手法があれば、通用する人材を育成できるでしょう。むしろ対人スキルやコミュニケーション力の習得が実際の活躍に大きく影響します。
ほとんどの男性が兵役経験者だという事実を踏まえるならば、年齢にとらわれすぎることなく人格と意欲を基準に人材を選考することが重要でしょう。軍隊経験者への期待を過剰に抱きすぎることなく、一人ひとりの可能性を見極めながら丁寧に育成していくことが大切です。
過去の経験よりも、教育後の実力こそが重要だと考えます。
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