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ベトナムのテトと五果の盆盛り付け

  • 広報
  • 2024年2月8日
  • 読了時間: 4分

更新日:2024年5月9日

ベトナムのテト!


2月に入り、日本では初春を迎え桜の季節が近づいている一方、ベトナムでは一年の締めくくりを控えた年末の時期を迎えています。


ベトナムの年初はテト(旧正月)と呼ばれ、1月1日から3日にかけて盛大に祝われます。テト文化は中国や台湾、韓国、シンガポールなど、農暦を基準にした旧正月を祝うアジア各国で共有される文化です。

※余談ですが、この旧正月は農暦(旧暦)に基づいて計算されたカレンダーです。この農暦は正月や中秋祭などのほか、結婚式や葬儀といった人生の節目や、大事な買い物などのタイミング選びにも用いられます。冬至の基準日や閏月の設定など、自然のサイクルに合わせた厳密な計算方法が用いられているのが特徴です。※


テトの時期には日本と同じく家族が集まる機会が多くなります。年末には街中で屋台市が開かれ花火が上がるなど、最も華やかなイベントが催されます。テト当日の朝には「先祖参拝」が行われ、親から子へ赤い封筒に入ったお年玉が手渡される風習も受け継がれています。




テトの装飾に赤と黄色が好んで用いられるのは、儒教の影響もあり中国と共通する文化的背景があるためです。赤は幸運や生命力、繁栄などポジティブな象徴とされることから、華やかなテトの雰囲気とマッチしていると言えます。日本の正月とは異なる独特のカラーリングがベトナムのテトを象徴する特徴でもあります。




そして、五果の盆盛り付け!


日本に鏡餅が定番のお正月飾りであるように、ベトナムのテトには供え物として「五果の盆盛り」と呼ばれる5種類の果物を用いた飾りが欠かせません。これは先祖や天へのお供えとして捧げられます。


文化専門家によると、数字の5に吉兆を込めたこの習わしは、五行思想やベトナム人の願う5つの幸福(富裕、尊敬、長寿、健康、平安)にちなんでいるとのことです。


五果の盆盛りに用いる果物にも地域差があり、北部、中部、南部で構成が異なります。


南部では、青い皮のグレープフルーツや丸いスイカなど、メコンデルタ地方で多く栽培される果物が五果の盆盛りに用いられることが多いようです。スイカを供える際には、赤い果肉が潤って育っていることが望ましいとされます。これはその家の主が事業で成功する予兆とされているためです。同様に、グレープフルーツも赤みの強いほうが良い運への期待が込められています。


南部の五果の盆盛りを選ぶ際には、果物名の頭文字の発音を組み合わせる言葉遊びが用いられます。たとえばマンゴー、ココナッツ、パパイヤ、マンゴスチンを並べると、「余分な物は不要、家族の1年間の生活費が足りれば良い」という意味合いを表しています。そこにイチジクまたはパイナップルを加えることで、さらに「子孫繁栄と家族の団結」「名声向上や良いことが起きる」といった願いが込められています。 一方、バナナは「不運」、オレンジは「我慢」、レモンは「新年持ちこし」を連想させることから一部の家庭では避けられがちだとか。




これに対して北部の五果の盆盛りにはバナナがよく用いられるそうです。バナナの房が仏の手の形状をしていることから、家族を守護する聖なる果物と位置づけられています。北部の五果の盆盛りにはこのほか、黄色いグレープフルーツやオレンジ、レモンのほか、白色の桃やアジア梨などが選ばれるケースが多いようです。


北部の家庭の五果の盆盛りを飾る際、一般的には一番下にバナナの房を置き、その上に他の果物を配していきます。真ん中にバナナを囲むようにグレープフルーツやブッシュカン(仏陀の手に形似ている)などを配置します。間に白桃やレモン、唐辛子などを組み合わせることで、アクセントになっています。




中部に関しては、五果の盆盛りの形式にこだわらない風潮が強い地域であると言えます。この地域は国内で最も過酷な気候に常にさらされているため、心を込めれば供えるものは何でもいいという考え方です。


中部の家庭の五果の盆盛りはそれぞれの地域によって異なりますが、南部と同様、マンゴー、ココナッツ、パパイヤ、マンゴスチンなどがよく使われます。フエ市ではモンキーバナナも加えることがあります。




しかし近年、生活条件の向上に伴い他地域からの文化流入も増加し、地域の垣根が低くなり、五果の盆盛りの傾向にも変化が生じています。形式にこだわらない風潮が高まる一方、見た目を良くするために様々な果物が用いられるようになりました。必ずしも5種類を揃える必要がなくなり、2〜3種類の果物を供えていても「五果の盆盛り」と称されることが多くなっています。


テト期間中にベトナムを訪れる際には、ぜひこうした五果の盆盛りをはじめとする装飾の文化や意味にも注目してみてください。風習について奥深い意味を理解することで、より楽しい旅になることでしょう。

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